
初夏になると宮崎の海岸に現れる、何やらレールのような跡
これは、アカウミガメの足跡なんです。

ここは宮崎県新富町の富田浜。
毎年5月から8月頃にかけて、アカウミガメが産卵のために、
この海岸にやってきます。

その年に初めて上陸が見られるのは、大体5月中旬頃。
その時の日向灘の海水温は、大体24℃前後です。
アカウミガメは、この海水温となった黒潮にのって、
東シナ海から九州南部沿岸に回遊し、産卵を始めているようです。
その後、産卵のピークは、6月末から7月初旬にかけて。
この時に産むと巣の中の温度がふ化率を高めるのに、
最もよい温度環境だということを本能的に、知っているのかもしれません。
そんな母ガメが1度に産み落とす卵の数は、平均110個。
そこから砂の中で、2か月ほどでふ化し、
子ガメは、いよいよ海へと旅立ちます。

宮崎野生動物研究会のみなさんは、
そんな母ガメの産卵や子ガメのふ化の調査を半世紀ほど続けています。
産み落とされたすべての卵から、子ガメが生まれるわけではありません。

ふ化後の調査で、ふ化しなかった卵塊がたくさんあることも・・
そしてふ化できたとしても、砂の中から這い出て海に入るまでに、
天敵がたくさん!
砂浜には、カニが目を光らせているし、
空からも海鳥やカラスが、滅多にないエサを求めて舞っています。
無事に海に入ったとしても、たくさんの魚が
口を開けて獲物を狙っているのです。
つまりアカウミガメたちは産まれてすぐに、人生最大の試練を迎えるのです。

そんな中、何十年単位で海の中で成熟し、
産卵のために戻ってくる母ガメたちは、ある意味
選ばれしエリートなのかもしれません。

さて、そんなウミガメですが、興味深い性質があります。
実は、母ガメが卵を産んだ時、子ガメの性別は、まだ決まっていません。
卵が経験する砂の中の温度によって、
オスになるかメスになるかが決まるという性質があり、
「ウミガメの自然誌:産卵と回遊の生物学」によると、
アカウミガメの場合は、29.7℃よりも高ければメス、低ければオスになるそうです。
ここで、懸念されるのが気候変動です。
このままどんどん温暖化が進んでいけば、メスばかりが生まれることになり、
繁殖できなくなってしまうのではないか、という心配が頭をよぎります。
アカウミガメは、温暖化の警鐘を鳴らしてくれているのかもしれません。
小さな命を守る取り組みは、私たち人間の命を守ることにも繋がります。
次の世代に命をつなぐために、今何をすべきか?
考えるきっかけになればと思います。
※卵の写真は、ふ化率を知るために、ふ化後に調査をした時のものです。
※許可をもらった調査員以外は、卵を掘り出せませんのでご注意下さい。


